犯人と疑われていったん逮捕勾留されると,ごく限られた面会時間(接見)以外は,外部の人々との連絡は基本的に遮断され,起床から就寝に至るまで,狭い留置場の中で,警察の監視のもと,24時間不安な時間を送ることとなります。

  そのような状況のなかでは,食事や睡眠がとれなくなったり,まともな精神状態を保つことすら困難になったりしてしまうのも不思議ではありません。このように心身が衰弱した状態で多数の捜査官から詰め寄られ,無実であるのに,捜査官の思い描く筋書きどおり間違いないと認めてしまう被疑者もめずらしくありません。たとえ,犯罪を犯したことが間違いない場合であっても,自分の言い分や反論を一切聞いてもらえずに,100%被害者の言い分どおりの調書が作られてしまうということもあるわけです。調書という法的な書面が作成されると,その調書の内容について捜査段階で話していたという証拠として,裁判で使われてしまう可能性が高くなります。

  そうすると,およそすべての事件は,弁護士の関与が必要であると言っても過言ではないかもしれません。弁護士は,一般の人と違い,接見時間に制限を設けられていません(一般の人は,平日の業務時間内のみ15分程度に制限されることが多い)。また,刑事手続の流れや,取調べに対する正しい対応の仕方,被疑者の権利などを逮捕勾留された人にアドバイスすることができます。また,正式に弁護人に選任すれば,弁護人は,捜査機関に申し入れをしたり,裁判所に対して不服申し立てをしたり,無罪の証拠を集めたり,被害者と示談交渉したりするなど被疑者のための弁護活動を開始します。

  なお,弁護士会から1回に限り,無料で接見(面会)をしてもらえる制度(当番弁護士制度)もありますので,法的なアドバイスを受けたいというだけの方はこの制度を活用されるとよいでしょう。自分のために弁護活動をしてもらいたいと思われる方は,正式に弁護人に選任する必要があります。弁護士費用については,弁護士とよく相談して確認しましょう。もちろん,ご家族の方から,逮捕された家族のために弁護人になってほしいというご相談もお受けしております。