離婚をするに際して協議すべき事項は,いずれの事項も,今後のあなた及びお子さんの将来を大きく左右する事項であり,十二分に熟考して決定すべきことです。

  協議の進め方については,慎重を要しますが,ポイントを述べると以下のとおりです。

(1) 財産分与

 ◆結婚してから現在に至るまでに形成した財産のうち,現在も残っている財産がどの程度あるか一覧表にします。もれなく挙げることが肝心です(土地,建物,自動車,預貯金,家具…というふうに,分類しつつ列挙していくと,もれがないでしょう。名義がいずれになっているかは問いません)。借金(住宅ローン等)もいわばマイナスの財産ですから,リストアップします。

 ◆次に,それぞれの値段(評価額)を算定します。土地,建物であれば不動産業者の査定書,自動車であれば中古車販売業者の見積もり,預貯金であれば通帳の残高,家具についても,処分価値のあるものなら中古品買取業者が見積もりを出してくれます。住宅ローン等借金については,金融機関に債務残高を問い合わせましょう。

 ◆それぞれをどのように分けるかを決めます。総額を2分の1ずつになるように分けるのが公平でしょう。すべてを売却してお金で2分の1ずつにするというのがもっとも簡潔明瞭ですが,必ずしもそうするのがお互いのためとはいえません。たとえば,不動産は,望む金額で売却できないことも多いからです。そこで,家は妻が全部引き継ぐが,その他の部分は譲歩する,というふうに,分け方も工夫する必要があるでしょう。

 ◆結婚した後に取得した財産でも,財産分与の対象とならない財産(遺産分割により取得した財産など)もあります。どの部分を財産分与の対象とすべきか,どのように分けるのがよいかについては,ケースバイケースとなります。

(2) 慰謝料

 ◆慰謝料が発生する代表的な例は,第三者との不倫(「不貞行為」といいます)です。どの程度の額に至るかは,不貞行為が婚姻関係の破綻にどの程度影響したかによります。詳細は弁護士に相談されることをお勧めします。

 ◆不貞行為以外でも,婚姻関係の破綻に責任のある側には慰謝料の支払義務が生じる場合があります。やはり,弁護士に相談されてみてください。

(3) 親権

 ◆一般論としては,子供が幼ければ幼いほど,母親が親権を獲得するのがふさわしいと考えられています。子供がある程度成長すると,それまでの親子関係の形成状況や,子供の意思なども加味して考えます。

 ◆「親権はぜひ獲得したい!」というのが,離婚を考える親の大半の願いでしょうが,「何が子供にとって最善なのか」という視点を,常に忘れないようにしましょう。本当に自分に子供が育てられるのか,自分ひとりで子育てが難しいのであれば周囲の協力体制はあるのかを,十分に検討することが必要です。

(4) 養育費

 ◆離婚協議においてもめることの多い分野のひとつですが,家庭裁判所で使われている養育費算定表が参考になります。

(5) 面会交流

 ◆離婚に際して,あんな夫と(またはあんな妻と)子供を二度と会わせたくない,という気持ちになることもあるかもしれませんが,子供にとっては二人といない,血のつながった父親(母親)です。面会交流については,相手に対する感情を切り離して子供の福祉と他方の親としての権利を考慮しつつ,柔軟に考えましょう。ただし,相手方がこれまで暴力を振るってきた場合や,面会交流の際に連れ去りを実行する可能性のある場合は,慎重な判断が必要です。

(6) その他

 ◆よく話題にされる「年金分割」は,国民年金の上乗せ部分(厚生年金など)についてであることに注意しましょう。国民年金保険料は,年金分割をどのように決めるかにかかわりなく,離婚後は自己負担しなければなりません。厚生年金部分については,分割割合を0.5とする旨の協議をし,その結果を公正証書にしておく必要があります(家庭裁判所での調停では,成立の際,調停調書が作られます)。

 ◆離婚の時期については,(1)~(6)の話し合いが済んで,書面化した上で届出をするのが無難です。さらに,養育費支払い等,金銭の支払が関係する場合には,公正証書にしておくべきでしょう。

 ◆家庭裁判所の調停調書には,判決と同一の効力がありますので,調停調書に基づいて強制執行することも可能となります。